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時間と空間の旅

上田裕則

Vol.85「嘘をついてはいけません」

昔、むかし、僕らが子供の頃、よく言われたものです。

「嘘をついてはいけません」と。

いま、私たちの周りを見渡してみて、どうでしょう?

誤解を恐れずに言えば、本当に嘘ばっかりの社会になってませんか?

「幅広く募っているという認識で、募集しているという認識ではなかった」と聞いたとき、少なからず、物書きの仕事をしている身としては、がっかりというか、からだの底から力が抜けてしまいました。これで、この国の未来は本当に大丈夫かと心の底から思ったものです。

9年前のあの日、私たちは本当に大切なものは何なのかを、その身をもって体験し、知ったはずではありませんか?

本当に大切なこと。

それは、生きること。

私たちにとっての奇跡とは、この世に生まれたことであり、今日を生き抜いた、そのこと自体であり、日々積み重ねられる毎日なのであり、それら総てが生きることだと、私は考えています。

いきものが生きることに嘘は存在しえません。

生きることを否定することは、その人の存在そのものを否定することで、それは私たちが決してやってはいけないことであり、今を生きる命の尊厳に対する冒涜です。

ご飯論法と言うんだそうです。

「今日、朝ご飯を食べましたか?」

「いえ、ご飯は食べていません。パンを食べました」

「じゃあ、食べたんですね? 朝ご飯」

「いえ、ご飯じゃなくて、パンです」

――だから、私は嘘をついてない。訊かれたことに、正直に答えてます。

こういうのを、僕たちは子供の頃にズルい、卑怯者、と教わりました。

お金儲けを優先し、自らの地位にしがみ付くあまり公私を混同し、長いものに自ら巻かれ、最も大切にしなければならない、国民の生命と財産を毀損し続けている。それでもなお、国民には大丈夫だと嘘をつく。

「直ちに健康被害が出るわけではありません」って、そんなこと、ないですよね?

いま新型のウィルスが世界を脅かしています。

発表されている事、報道されていることの総てが正しいと思えないのが、一番怖い。

新型です。誰も適正な免疫を持っていません。だからこそ、正確な情報が欲しい。生き物の本能として怖いものは怖い。眼に見えないから、余計に何が起きてるのか知りたい。生きるため、大切な家族を守るために本当のことを知りたいのに、飛びついた情報が本当のことではないことが、残念ながら、普通にあるのです。

誰が見ても自分のため、保身のための嘘ほどみっともないものはありません。

嘘を嘘で固めて、いつしか本当のことが何だったのかさえ分からなくなる。

日々、懸命に生きているこの奇跡を守り続けるために、嘘をついてはいけません。

うえだひろのり
有限会社いわき損賠保険サービス代表取締役
宅地建物取引主任者
一般旅行業務取扱主任者

有限会社いわき損害保険サービス
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