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時間と空間の旅
上田裕則Vol.77「ビートル」
ビートル。みなさんの頭の中には何が思い浮かびましたか?
カブト虫? それともフォルクスワーゲン・ビートル?
なるほど、確かにフォルクスワーゲン・ビートル、ありますね。でも、これはあくまで私見ですが、そんなにカブト虫に似てますか?
実は、ここに誤解があるのです。というのは、カブト虫をビートルというのではなくて、ビートルの中にカブト虫がいるのです。ビートルは広く甲虫類をさす言葉で、甲虫類にはカブト虫をはじめ、クワガタムシやカミキリムシ、テントウムシ、ゾウムシ、ホタルなど非常に多くの昆虫が含まれます。今ではあまり見なくなったゲンゴロウやミズスマシなども甲虫類、ビートルに含まれます。なんとなく、形から甲虫類のイメージ、出来ますよね。
フォルクスワーゲン・ビートルと呼ばれているのは、タイプ一。普通に見かけるビートルはこれです。約半世紀にわたって世界中で販売されたこの車は、累計生産台数2153万台! 世界で最も多く生産された自動車なんです。いかに世界中の人々から愛された車かってわかりますよね。
日本車で最も多く生産された車は……そう、トヨタカローラです。トヨタ自動車の全生産台数の約四分の一、一〇〇〇万台も生産されたんです。一〇〇〇万台超えの車は、ビートルとカローラの他にはT型フォード。これだけです。カローラの強力なライバルだったのが日産のサニー。累計生産台数のデータを探したのですが、残念ながら見つからず。ただサニーという車名は、一般公募されたものらしく、約八〇〇万という応募の中から、晴天を意味するサニーに決まったとか。
サニーの発売は一九六六年、昭和四十一年です。当時、八〇〇万もの応募があったことに驚きます。それだけ一般大衆車に対する期待が大きかったんでしょうね。
私が子供の頃、昭和四十年代には、普通にカブト虫を林に獲りに行ったものです。
早朝の林に足を踏み入れて、スズメバチに本気で追いかけられたこともあります。
夏井川の土手だったと記憶してるんですが、真っ黒な土の中にカブト虫の幼虫や卵があって、それを土ごととって飼育ケースに入れて、卵から幼虫へ、幼虫からサナギへ、そして成虫へと毎日、毎日見ていたものです。不思議だったのは、あの芋虫みたいな幼虫から、どうしてあの形のサナギになるのか。いまでも全く理解できません。カブト虫だけじゃないですよね、クワガタも、チョウも、セミも、幼虫の姿からは全く成虫の形が想像つきません。これは学術的にも、いまだ解明されていないらしく、一説には古生代末期(恐竜が出現する前ですよ)の気候変動、どうやら寒くなったらしく、サナギの形態をとることで寒さをしのいだのではないか、とも言われていますが、本当のところは分かっていないんだそうです。
いまではカブト虫もネット販売される時代。ミンダナオオオカブト虫、最大65%オフ!ですって。いやいや……。
デジタル化、AI化が加速度的、ワープ的に進行する社会ですが、変わらず愛されるものは確実に存在するのですね。あなたにとってのビートル、何かありますか?
大切なもの、それを大事にする心も大切にしたいものです。
うえだひろのり
有限会社いわき損賠保険サービス代表取締役宅地建物取引主任者
一般旅行業務取扱主任者
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