暮らし情報

時間と空間の旅

上田裕則

Vol.75「一人ひとりが」

プラチナウィークともいうべき十連休が終わりました。事前の調査では四割の人が自宅で過すという意見が最も多く、帰省を含む一泊以上の国内旅行が約三割、日帰り旅行の予定は二割弱で、海外旅行に行くという人は三%弱でしたが、そもそも、みなさん、十連休、全部休めました?

十日間休めた人は全体の約四割程度で、四人に一人はゴールデンウィーク中も出勤したようです。そりゃそうですよね、交通機関もそうですし、商売をしている人は簡単に休めるわけがないのです。

いま、政府は大きく「働き方改革」の看板を掲げていますが、働き方改革って何のことか、何をやっているか、ご存知ですか?

難しく言うと、働き方改革は「一億総活躍社会を実現するための改革」で、五十年後も一億人の人口を維持する社会を目指しているんです。カンタンに言うと、人口減少がこれ以上進むと困ったことになるから、どうしようか、ということです。

昭和四十八年をピークに減少を始めた日本の人口は、今後加速度的に減っていきます。内閣府が発表している資料でも二〇四八年、あと三十年後には一億人を割込むと予想していますが、おそらくもっと早く一億人を割るでしょう。

地方の人口減少は歯止めがきかず限界集落が爆発的に増え、市街地には空き家空き地が溢れ、せっかく作った二車線道路もスカスカになるでしょう。トンネルや橋の維持管理も出来なくなり社会インフラ自体の危険度が上がることが容易に予想されます。

人口減少が国に最も影響を与えるのが労働力の問題です。働き手の減少は税収の減少に直結します。医療や年金、介護などの社会保障が立ち行かなくなる恐れがあるわけです。そこで一億総活躍社会の登場です。戦時中の国民総動員と一緒です。女性や高齢者に働きましょうと言い、外国人労働者を増やして労働者の数を増やす。出生率を上げて将来の働き手となる子供の数を増やす、あるいはAIを導入して労働生産性を高める。

ところが女性や高齢者の働き手が増えれば、出生率や育児の問題が生じます。AIの導入は就業機会そのものを奪います。長時間労働も問題になっていますが、人口減少の著しい地方でコンビニの二十四時間営業、本当に必要ですか?

政府は今年度から原則五日以上の有給休暇の取得を企業に義務付けました。でも休日が増えても、休んで何をすればいいのか分からないという人も多いことも事実。それが十連休を家で過すという四割の数字に如実に現れています。

自分が一番大切にしていることを、本当に大切にしていますか?

なんのために働くのか、何のために休むのか、もっと言えば、この世に生まれてきて自分は何をしようとしているのか、「自分が望むものは自分が一番よく知っているはずだ」とは、ギルバート・ヂュランダルのセリフですが、そんなことを是非、考えて欲しいと思うのです。

一人ひとりが主体的に行動すること、それこそが地域や社会を元気にする一億総活躍社会のスタート地点になると思うんですがね。

うえだひろのり
有限会社いわき損賠保険サービス代表取締役
宅地建物取引主任者
一般旅行業務取扱主任者

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