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時間と空間の旅

上田裕則

Vol.82「なんてったって、富士山」

お正月といえば、富士山です。なぜなら、一富士二鷹三茄子(いちふじ、にたか、さんなすび)ですから。これは徳川家康が好きなものとか、駿河国(いまの静岡県辺り)の特産物を並べたとか諸説あるらしいですが、いずれにしろ、意外に歴史は浅いようです。

これには続きがありまして、四扇五煙草六座頭(しおうぎ、ごたばこ、ろくざとう)となります。これは一富士二鷹三茄子に揃えてあると言われます。例えば、富士と扇は末広がり、鷹と煙草の煙は高く上がるから運気上昇、茄子と座頭には毛がないので、怪我なしなんだとか。よく考えました。

ということで富士山。あれほど美しい山は他にはありません。確かに、日本各地に美しい山はたくさんあります。東北道を北上すると、右手にいきなり岩手山が現れます。あまりに大きくてびっくりします。もっと北上すると岩木山が単独峰として美しい姿を見せてくれます。薩摩半島の開聞岳も美しいし、鳥取の大山とか、沖縄の伊江島のイータッチューも好きな山です。

でも、やっぱり富士山は別格です。だから、私は富士山には登らない。私のような穢れた者の足で富士山を踏みつけるなど、考えられない。

一昨年の五月。雲一つない青空。超快晴。第二東名高速を東京へ向けて走っていたときの富士山は忘れられません。それは、それは美しかった。

初めは進行方向左手奥、遠くに山の頂が見えます。もう、これでテンション、アゲアゲです。しばらく山の陰に見え隠れしながら、そしていきなり全景が姿を現します。

すぅーっと伸びる美しい裾野の曲線がどこまでも広がります。高速道路の正面にぐんぐん迫る山体に、ハンドルを持ちながら頭の中で首を垂れて祈ります。そう、祈ってしまうのです。富士山がきれいに見えると、とても幸せな気持ちになります。

かつて、私たち日本人の信仰は山や巨石、大きな木。そういう自然を正しく畏れて敬ってきたのです。きれいだな、すごいな。それが神々しく見えたのでしょう。こうした自然崇拝は仏教と区別するために神道と呼ばれてはいますが、本来、生き物としてのヒトが畏れ、敬ってきたのは、こうした自分たちの力が及ばない存在や力だったのではないかと思うのです。それが日本人の精神構造の基本ではなかったか。

そんなことを考えてしまう富士山。新幹線に乗るときは基本、山側のE席(一度だけ、間違ってA席をとってしまったことがある。そのときの富士山もすごかった。。。)。三島駅から富士駅の間。新幹線の車窓から目線が離せないのであります。大阪から福島に飛んだ飛行機。機長アナウンスがあって、富士山の頂上を上から見たこともあります(富士山、ごめんなさい)。

富士山は本州に伊豆半島がぶつかってきて出来ました。八〇〇〇万年後には、ハワイが同じように日本にぶつかるらしい。もっとも、いまから二億五千万年後には、大陸が全部くっついてしまうらしいから、日本の形もないだろうけど。

頭を雲の上に出し~、四方の山を見下ろして~。

頭が雲の上に出てたら四方の山は見えないと思うんだけど、富士山にはできるらしい。さすが、霊峰。  さて、みなさまの初夢は、どんな夢になりますでしょうか?

一富士? 二鷹? それとも?

うえだひろのり
有限会社いわき損賠保険サービス代表取締役
宅地建物取引主任者
一般旅行業務取扱主任者

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